「ビネー」や「ウィスク(WISC)」という言葉を、どこかで聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
また、通っている園や学校の先生から勧められたという方もいらっしゃるかもしれません。
どちらもお子さんの知能や発達の具合を測る検査です。
ここでは、就学前から就学後まで使われることの多い「田中ビネー知能検査Ⅴ(以下、田中ビネー)」と「WISC-Ⅴ」についてお話したいと思います。
田中ビネー知能検査Ⅴとは?
「田中ビネー知能検査Ⅴ」(以下、ビネー)とは、フランスのアルフレッド・ビネーさんが考えた「一般知能を測るための検査」をもとに、日本の田中寛一さんが日本人向けに開発したものです。
時代に合わせて何回か改訂が行われており、今使われているのは第5版となります。
対象年齢は2歳0ヶ月から成人までと幅広くなっています。
ビネーでは14歳以上とそれ未満で知能指数についての考え方が変わるので、ここでは2歳から13歳が検査を受ける場合について話をしたいと思います。
検査方法は?
検査には検査者と一対一で取り組みます。
課題は1歳級、2歳級などと年齢によって分けられています。
概ね実際の年齢と同じ級から始め、年齢級が上がったり下がったりします。
その年齢級が全て不正解になるまで行いますので、お子さんによっては2~3歳上の年齢級の課題を解くこともあります。
検査でわかること
ビネーでは「一般知能」を測定していると言われています。
簡単に言えば、「生活全般に対して、何歳程度の適応力があるか」を測っています。
正解した課題の数から精神年齢が算出され、さらにIQが算出されます。
IQは100になる人が一番多いと言われており、そこを基準とした知能の発達具合がわかります。
ビネーは就学相談や療育手帳の等級の判定など、幅広く使われています。
実際に生活していく中での適応力を考えたい場合に、ビネーを実施することが多いように感じられます。
WISC-Ⅴとは?
「WISC-Ⅴ」(以下、WISC )とは、ルーマニア生まれでアメリカの心理学者であるデイヴィッド・ウェクスラーさんが開発した発達検査です。
こちらも時代に合わせて何回か改訂が行われており、今使われているのは第5版となります。
対象年齢は5歳0ヶ月から16歳11ヶ月です。
検査方法は?
こちらの検査も検査者と一対一で取り組みます。課題は16種類あり、これを下位検査と呼びます。
いずれも簡単な問題から徐々に難しい問題になり、いくつか不正解になったところでおしまいになります。
そのため、ビネーと同じく、年齢を上回る難しさの課題を解くこともあります。
下位検査は、「言語理解」「視空間」「流動性推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の5つの領域に分けられます。測っているものは以下のとおりです。
「言語理解」:言葉で考える力や、言葉で表現する力など
「視空間」:言葉を用いずに考える力や、見たものをもとに考える力、空間での位置関係を把握する力など
「流動性推理」:臨機応変に考える力や、概念や法則性を見出す力など
「ワーキングメモリー」:物事に注意集中する力や、見たものや聞いたものを頭の中で覚えておける量など
「処理速度」:物事に注意集中する力や、物事をこなす速さや能力など
また、これら5つの領域を合わせたものを全検査IQ(FSIQ)と呼びます。
検査でわかること
このように、WISCでは全般的な発達具合だけでなく、より細かく苦手な部分や得意な部分がわかるようになっています。
そのため、「勉強にはついていけているが、落ち着きがなく、ケアレスミスが多い」「音読や計算はできるが、漢字が覚えられない」など、得意な部分と苦手な部分のでこぼこの原因を捉えるために実施することが多いように思われます。
まとめ
以上のように、ざっくりと言ってしまえば、ビネーは全般的な適応能力を、WISCはそのお子さんの得意・不得意を測っています。
どちらにも共通していえることは、算出されたIQや数値は今後の環境や関わり方で変動する可能性があるということです。
検査結果をもとに、得意なところを伸ばしたり、苦手なところをサポートする方法を考えたりできるとよいでしょう。
また、「検査にあたって、どんな準備が必要ですか?」と聞かれることもありますが、事前準備は必要ありません。
お子さんに「楽しいクイズ大会に行こうね」などと声をかけていただいて、検査に対してポジティブなイメージを持てるとよいでしょう。
検査ではどのお子さんも頑張りますので、検査が終わった後は思いっきり褒めてほしいと思います。
執筆者:公認心理師 臨床発達心理士 團藤 有香里
検査結果を渡されるときに検査中の様子を伝えられることもありますが、検査の詳細がわかってしまうと、後に検査を受けるお子さんたちに影響が出ることもありますので、みだりに口外しないことも大切です。